秩禄奉還の法
秩禄奉還の法(ちつろくほうかんのほう)は、1873年に明治政府が制定した政策で、旧武士階級である士族や華族が受け取っていた年金(秩禄)を一時金として返還させることを目的とした制度です。この政策は、武士階級に与えられていた年金制度を縮小し、最終的には廃止するための準備として行われました。 江戸時代から武士たちは、藩や幕府からの年金で生活を支えてきましたが、明治維新後、近代的な中央集権国家を目指す明治政府は、国家財政の健全化と封建的な身分制度の廃止を進めるため、旧武士階級に対する特権を削減する方針を打ち出しました。秩禄奉還の法は、士族や華族に対して年金の代わりに一時金を支払うことで、秩禄を返還させる制度であり、国家財政の負担を軽減すると共に、士族たちに新たな職業に就くよう促す狙いがありました。 この政策により、多くの士族は一時金を受け取る代わりに年金を放棄しましたが、生活基盤を失うこととなり、不満を抱く者も少なくありませんでした。特に、士族たちは経済的に苦境に立たされることが多く、この不満は後の西南戦争など、士族反乱の一因となりました。 秩禄奉還の法は、1876年の秩禄処分へと繋がり、武士階級の年金制度が完全に廃止されるきっかけとなりました。